山口健治の“江戸”鷹の目診断「前橋記念」

山口健治の“江戸”鷹の目診断「前橋記念」

2013/06/27

山口健治の“江戸”鷹の目診断「前橋記念」

自在に立ち回れる成田に勝機アリ!

 先行をガードしながらヨコに強く、そのうえタテに伸びる鋭い脚を持つ者こそが真の追い込み型である。「前橋記念」(6月28日〈金〉~7月1日〈月〉)に出走予定のS級S班は、岸和田高松宮記念杯を制した成田和也と、長塚智広武田豊樹浅井康太の4人。S1にはドームバンクを得意にしている脇本雄太をはじめ、機動力型がそろう。残り3周の青版から戦闘開始、ファンにはたまらない出入りの激しいバトルが連続しそうだ。

 成田の宮記念杯決勝戦は、追い込み型のお手本のようなレースだった。新田祐大につけられたことが最大の勝因も、新田を2着に残し、伏見俊昭が3着。福島勢で表彰台を独占したのは、成田の冷静な判断があったからとも言える。

 人一倍責任感が強い男。ある記念の最終日、ファイナルに残れなかった成田は、インに突っ込んで落車したことがあった。レース後「どうしてインを突いたのか?」と聞くと、「ファンの期待に応えるには、あれしかないと思って‥‥」と、ファンあっての競輪を意識してのことだった。真面目な性格が顔に出ている好漢。東日本きっての追い込みが真価を発揮するのはこれからだ。

 さて、並びと展開。地元群馬勢は、前回09年のここを勝っている矢口啓一郎木暮安由がつける。北日本は鈴木謙太郎─成田の福島両者、関東は武田─長塚─宗景祐樹で茨栃トリオ。中部は浅井─吉田敏洋も、脇本の後位が空いていれば浅井が番手の中部近畿で結束もある。

 他では才迫勇馬柏野智典の中国コンビと小埜正義萩原孝之の南関勢が圏内と見た。

 主導権は脇本と才迫が譲らず、ペースアップは必至。その直後から武田、浅井がチャンスをうかがうことになる。

 本命は鈴木に乗ってさばく成田。切り替え策や、まくりもありそうで、自在に動いて勝機をつかむ。対抗は好調な浅井。3番手評価の脇本と武田も差はない。

 伏兵は、天田裕輝(群馬・91期)、森山智徳(熊本・98期)、猪俣康一(愛知・99期)の3選手。

 まくり主体から先行に戻して結果を出しているのが天田。ホームバンクで気合いが入る。森山はカヌー、猪俣はマウンテンバイクと異色のアスリート出身。29歳と37歳、新天地で生活がかかるファイトに期待したい。

◆プロフィール 山口健治(やまぐち・けんじ) 1957年1月、東京都荒川区生まれ。競輪学校38回生卒業チャンピオンとしてデビュー。主なタイトルは日本選手権、競輪祭(2度)。09年1月引退。現在「スポーツ報知」評論家。