山口健治の“江戸”鷹の目診断「豊橋記念」

山口健治の“江戸”鷹の目診断「豊橋記念」

2013/07/18

山口健治の“江戸”鷹の目診断「豊橋記念」

 競輪で活躍しながら、トラックレースに参戦する選手が珍しくなくなった。「豊橋記念」(7月20日〈土〉~23日〈火〉)に出走予定のS級S班は、長塚智広山崎芳仁浅井康太深谷知広の4人。梅雨明けしてバンク状態は絶好。各選手が持てる能力をいかんなく発揮できるだけに、SS班といえども油断できない熱戦が連続しそうだ。

 06年に地元記念のここを勝っているのが、深谷の師匠でもある金子貴志。タイトルホルダーの伏見俊昭や太田真一と同じ75期の37歳。タイトルこそ獲っていないものの、今も先行選手としてトップクラスの地位にあることは誇っていいだろう。

 金子の支えになっているのは、自費で世界の強豪がそろうトラックレースに参戦したこと。強くなりたいがために高地トレーニングを取り入れ、トレーニング場も作った。オリンピック出場はかなわずにいるが、その自転車にかける情熱が深谷を育てたとも言える。若々しい走りで、まだまだバンクを沸かせてくれるはずだ。

 渡邉一成もトラック競技に力を注いでいる一人だ。08年北京五輪、12年ロンドン五輪と2大会連続で五輪に出場している。その経験は競輪にも生かされていて、金子と対戦するようなら先行争いは見物になる。

 さて、並びと展開。地元地区は深谷─金子に、浅井は3番手で折り合う。近畿は川村晃司東口善朋、九州は荒井崇博合志正臣

 北日本は渡邉一─山崎芳の福島88期の両者と、関東は神山拓弥─長塚で結束する。また、小埜正義勝瀬卓也の南関コンビも圏内だ。

 川村か小埜が前をうかがうところを、深谷が間髪いれずに発進する。好位に神山がつけて、渡邉、小埜らは、まくり狙いになる。

 ◎金子=○浅井。スピード能力が抜けている深谷の後位につける2人が断然有利で、ゴール前はマッチレースになる。3番手評価は、深谷と渡邉を利す山崎で互角と見た。

 伏兵は、愛敬博之(愛知・94期)、雨谷一樹(栃木・96期)、阿部力也(宮城・100期)の機動力型3選手。

 今期、2年ぶりにS級に返り咲いたのが愛敬。ホームバンクの一人、予選と負け戦で狙いたい。雨谷と阿部は初のS級。まくりを封印し、先行で勝負する姿を見てみたい。

◆プロフィール 山口健治(やまぐち・けんじ) 1957年1月、東京都荒川区生まれ。競輪学校38回生卒業チャンピオンとしてデビュー。主なタイトルは日本選手権、競輪祭(2度)。09年1月引退。現在「スポーツ報知」評論家。