【一杯酒場】　東京・神田小川町「かんだ串亭」

都心にありながらひっそりと、しみじみと味わう料理と、新潟の地酒。

東京、神田小川町で創業36年となる、界隈では古株の居酒屋。仙台の女将が新潟育ちだったため、当時”幻の三梅”といわれた「越乃寒梅」「峰乃白梅」「雪中梅」を仕入れるルートがあり、地酒と焼き鳥が売りの店としてスタートした。

新潟を中心に常時30種ほどの酒を扱い、そこに季節ものが加わる。特に東京で全種揃うのは珍しい「鮎政宗」は、先代が新潟の妙高山中で道に迷った末、蔵へとたどり着いたことから付き合いが始まったというから運命的だ。それではと「鮎政宗 純米酒」を頂くと、まずどっしりとした旨味が来て、爽やかな香りとともに後味がスッと引く上品な酒。

焼き鳥専門から今では種類豊富となった料理も、酒の味を邪魔しないのが信条で、玉ねぎの甘味と塩味の絶妙なバランスの上に成り立つ麗しい姿の肉豆腐は、洗練を感じる一品。

市場から仕入れる他、館山と徳島の港から定期的に届く新鮮な魚介を刺し盛りで頂けば、ご主人の鮮やかな技が驚くほどリーズナブルに堪能できる。

そして常連たちがこの店で冬が来るのを待ちに待っている理由が、季節限定の「かきの揚げだし」。滋味深いダシの海に、鮮烈な旨味を衣で閉じ込めた牡蠣が浮かび、噛み締めれば酒でおわずにはいられない。

かんだ串亭
住所：東京都千代田区神田小川町3-2-9
電話：03-3295-2187
営業時間：月～金17:00～24:00、土・日・祝17:00～23:00
定休日：無