貧困女子たちが最後にすがった「肉欲奉仕労働」の哀歌を訊け! vol.3 「渋谷のハチ公前しか知らず…」

貧困女子たちが最後にすがった「肉欲奉仕労働」の哀歌を訊け! vol.3 「渋谷のハチ公前しか知らず…」

2016/06/16

貧困女子たちが最後にすがった「肉欲奉仕労働」の哀歌を訊け! vol.3 「渋谷のハチ公前しか知らず…」

新人AV女優の白咲まどか(18)の母は税理士で、中学時代はいじめで不登校だった。女手一つで育てた母は再婚を機に娘を煙たがるようになり、全寮制の高校に入学させる。学校の海外ボランティア実習で、子供が生活のために働いている姿を見て「労働」の意味を知るが、入学半年で先輩と大ゲンカ。着のみ着のまま無断で寮を飛び出した。

「時給600円でバイトして、ようやく貯めた2万円だけ持って最初は札幌に行ったんです。そこで20代のサラリーマンにナンパされて、20歳だってウソをついて1週間泊めてもらいました。セックスも、その時に初めてしました」

結局、年齢がバレて「出ていって」と言われた白咲は、飛行機に乗った。

「東京に行けば何とかなる気がしたし、あと、少なくともナンパについていけば生きていける、っていうことを覚えちゃったんです」

羽田到着後、目指したのは渋谷のハチ公前。そこしか知らなかったからだ。

「ハチ公前で待ってたら、やっぱり声をかけられるんですよ。最初のうちは、お金はもらってませんでした。『服買ってくれたらいいよ』とか『御飯おごってくれたらいいよ』とか。荷物も何もないから、下着は買ってもらったらそれまでのものを捨てて、っていうのを繰り返していました」

バイトの面接を受けようにも、保険証すら持っていない15歳の少女にはどうすることもできない。毎日渋谷の同じ場所に立っていると、寄ってきたのはスカウトの男。未成年を承知で、ある仕事を紹介してきた。

「援デリです。いちばん稼いでいた頃で、月に100万円くらいかな。そのスカウトの人が住む部屋も紹介してくれて、ようやく、自分の稼いだお金で生活できるようになりました」

「援デリ」とは「援助交際デリヘル」の略で、出会い系サイトなどにあたかも「個人の援助希望」のように書き込んで客を取るデリバリー風俗のこと。荒稼ぎはしたものの、信頼してお金を預けていたスタッフに持ち逃げされた。相次ぐトラブルに、17歳の手前で心身不調から倒れる。

「その時一度、まったく連絡を取ってなかった実家に帰って、ちゃんと高校も退学届を出してきました。それから、もう一度上京してきたんです」

普通の営業事務の仕事や、「エスコート」と呼ばれる席に着かないキャバクラの雑用スタッフなどに就いたが、給与はスズメの涙だった。18歳を迎えた時、再びスカウトに声をかけられ、AVの世界に飛び込む。

「出演作は少なくて、今はマネージャーさんと一緒に、メーカーさんに面接に行ったりしています。十分なお給料もいただけているし、働いている実感もすごくある。いろんな仕事をしてきた中で、AVに出会って、ようやくちゃんと向き合ってやっていきたい、と思えるようになりました」

昨今、「AV業界は悲惨な性奴隷生産現場」というキャンペーンが張られている。しかし、その業界は現実的に白咲を救っている。

女性の社会進出をうたいながら増える〝最〟貧困女子。肉体奉仕労働が「セーフティネット」となっている皮肉な現実、その問題は根深い‥‥。