ビデオ・ザ・ワールドが見た“AV30盛衰史”(10)メーカーとの関係が崩れた ツイート 2013/06/19 h.m.pで10年以上、広報を担当してきた岡崎氏が言う。「こちらから『誌面で取り上げてくれ』というと、『じゃあ広告を出してくれ』という雑誌が増えましたね」 実はライターや編集者側からも、最近はメーカーの広報が協力的ではなくなったという声が聞こえる。「それはたぶん05年くらいから、貸し出す写真がポジ(フィルム)からデジタルデータに変わったことが大きいんじゃないでしょうか。以前は、編集の方がこちらにポジを切りに来てましたから、雑談をしたりして仲よくなったんですが、デジタルになってからはメールで、一度も顔を合わさないなんてことも増えましたから。どうしても関係がビジネス的になってしまうんです」(前出・岡崎氏) 以前はAVメーカーから写真を借りる時は、実際にメーカーを訪ねて、ポジフィルムの束の中から使用する写真を切り出すという作業があった。メーカーの広報室にはそうしたポジ切りコーナーがあり、作業をしながら広報の人や、他社の編集者と会話をするという交流があったのだ。 AV誌は告知媒体としての力を失いつつある。単純に売り上げが落ちているだけではなく、青少年健全育成条例のためにアダルト誌はテープ貼りが義務化され、立ち読みすることができなくなった。つまり購入しないかぎり、中身が確認できないのである。 さらに読者の高齢化も年々進んでいる。「読者は30代、40代、あるいはそれ以上の世代ですね。20代はほとんどいません」(前出・大木氏) AV誌に限らず、エロ雑誌には新しい若い読者が入ってくることは、まずない。若い世代にとって、エロ雑誌を買うという習慣自体がないようなのだ。 加えて、エロ雑誌を買っている読者の特徴として、ネットをやっていないことがあげられる。「アンケートを見るとわかるんですが、インターネット関連の記事がいつもワーストワンなんです。『意味がわからない』と言われます」(前出・大木氏) ネット上では、無料でAVの画像や動画も入手できるこの時代に、エロ雑誌を購入してくれる読者は減りこそすれ、増加するとは考えにくい。 ましてやAV情報に関しても、雑誌よりネットの存在感が大きくなっている。各メーカーが自社のサイトに詳細なデータを掲載しているだけでなく、DMMなどの通販・配信サイトでは、ユーザーによるレビューを読むことができる。しがらみに縛られている(と思われている)プロのライターによるビデオ評よりも、一般ユーザーのレビューを信用するという人も多い。「イベントをやる時なども、雑誌に告知するよりも、自社のツイッターでつぶやくほうが効果がありますね。あとはフォロワーの多そうな関係者につぶやいてもらうようにお願いしたり。ツイッターは情報が拡散するのがはっきりと目に見えますし、速報性があります。雑誌にお願いしても、モノクロの情報ページに小さく掲載されるだけだと、読者がどれくらい読んでくれるのかわからないですよね」(前出・岡崎氏) 以前は、AV女優の素顔を知るためには、AV誌に連載されていたコラムなどを読むしかなかったが、今ではAV女優本人がブログやツイッターをやっているため、より生々しい声に触れることができるようになった。書き込みをすれば本人から返事をされることもある。ファンにとっては、やはりそちらのほうがうれしいだろう。ニコニコ生放送のように、AV女優がファン向けの番組を放送することも増えた。 こうなってくると、前回紹介した英知出版=宇宙企画のように、雑誌とAVメーカーが一緒になって女優を盛り上げていくという関係を築くのも難しくなる。メーカー側にとって、AV雑誌に告知媒体としての魅力が、あまりに乏しくなってしまっているのだ。◆フリーライター 安田理央 タグ: DMM,ソフト・オン・デマンド,ビデオ・ザ・ワールド,ベストビデオスーパードキュメント,素顔,週刊アサヒ芸能 2013年 6/20号 エリア選択 北海道 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島 茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川 新潟 富山 石川 福井 山梨 長野 岐阜 静岡 愛知 三重 滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山 鳥取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄 韓国 [北海道] [青森県] [奈良県] [韓国] [鹿児島県] [熊本県] [秋田県] [北海道] [三重県] [東京都]
h.m.pで10年以上、広報を担当してきた岡崎氏が言う。
「こちらから『誌面で取り上げてくれ』というと、『じゃあ広告を出してくれ』という雑誌が増えましたね」
実はライターや編集者側からも、最近はメーカーの広報が協力的ではなくなったという声が聞こえる。
「それはたぶん05年くらいから、貸し出す写真がポジ(フィルム)からデジタルデータに変わったことが大きいんじゃないでしょうか。以前は、編集の方がこちらにポジを切りに来てましたから、雑談をしたりして仲よくなったんですが、デジタルになってからはメールで、一度も顔を合わさないなんてことも増えましたから。どうしても関係がビジネス的になってしまうんです」(前出・岡崎氏)
以前はAVメーカーから写真を借りる時は、実際にメーカーを訪ねて、ポジフィルムの束の中から使用する写真を切り出すという作業があった。メーカーの広報室にはそうしたポジ切りコーナーがあり、作業をしながら広報の人や、他社の編集者と会話をするという交流があったのだ。
AV誌は告知媒体としての力を失いつつある。単純に売り上げが落ちているだけではなく、青少年健全育成条例のためにアダルト誌はテープ貼りが義務化され、立ち読みすることができなくなった。つまり購入しないかぎり、中身が確認できないのである。
さらに読者の高齢化も年々進んでいる。
「読者は30代、40代、あるいはそれ以上の世代ですね。20代はほとんどいません」(前出・大木氏)
AV誌に限らず、エロ雑誌には新しい若い読者が入ってくることは、まずない。若い世代にとって、エロ雑誌を買うという習慣自体がないようなのだ。
加えて、エロ雑誌を買っている読者の特徴として、ネットをやっていないことがあげられる。
「アンケートを見るとわかるんですが、インターネット関連の記事がいつもワーストワンなんです。『意味がわからない』と言われます」(前出・大木氏)
ネット上では、無料でAVの画像や動画も入手できるこの時代に、エロ雑誌を購入してくれる読者は減りこそすれ、増加するとは考えにくい。
ましてやAV情報に関しても、雑誌よりネットの存在感が大きくなっている。各メーカーが自社のサイトに詳細なデータを掲載しているだけでなく、DMMなどの通販・配信サイトでは、ユーザーによるレビューを読むことができる。しがらみに縛られている(と思われている)プロのライターによるビデオ評よりも、一般ユーザーのレビューを信用するという人も多い。
「イベントをやる時なども、雑誌に告知するよりも、自社のツイッターでつぶやくほうが効果がありますね。あとはフォロワーの多そうな関係者につぶやいてもらうようにお願いしたり。ツイッターは情報が拡散するのがはっきりと目に見えますし、速報性があります。雑誌にお願いしても、モノクロの情報ページに小さく掲載されるだけだと、読者がどれくらい読んでくれるのかわからないですよね」(前出・岡崎氏)
以前は、AV女優の素顔を知るためには、AV誌に連載されていたコラムなどを読むしかなかったが、今ではAV女優本人がブログやツイッターをやっているため、より生々しい声に触れることができるようになった。書き込みをすれば本人から返事をされることもある。ファンにとっては、やはりそちらのほうがうれしいだろう。ニコニコ生放送のように、AV女優がファン向けの番組を放送することも増えた。
こうなってくると、前回紹介した英知出版=宇宙企画のように、雑誌とAVメーカーが一緒になって女優を盛り上げていくという関係を築くのも難しくなる。メーカー側にとって、AV雑誌に告知媒体としての魅力が、あまりに乏しくなってしまっているのだ。
◆フリーライター 安田理央