大阪「自殺サイト」連続殺人裁判傍聴ファイル(3)ICレコーダーに苦悶の声を録音 ツイート 2013/09/25 04年暮れ、ネット上のサイトをチェックしていた前上は、自殺願望を持つ者が集まる、とある「自殺サイト」の掲示板で女性の書き込みを発見した。 その女性は同年6月頃から幻聴に悩まされ、〈精神科への入退院を繰り返す一方、自殺サイトに自らの自殺願望を内容とする書き込みをしていた〉(冒頭陳述書より抜粋) 前上は女性および同様の書き込みをする自殺志願者3人の計4人と、頻繁にメッセージ交換をした。程なく、一緒に練炭自殺することを誘う内容のメールを全員に送信。すぐに女性からそれに応じる旨の返事が届いた。 前上は〈レンタカーで人気のないところまで連れて行った後、その手足を縛って逃走・抵抗できないようにしてから、同女の鼻口を塞いで窒息させたり、薬品を嗅がせたりしてもがき苦しませて、これを楽しみ、最後に窒息させ殺害〉(同)する計画を練った。 05年1月7日、前上は女性と待ち合わせ、河内長野市内の山林にある駐車場に到着した。そしてレンタカーの中で女性の手足を緊縛し、白のソックスをはかせたうえ、その鼻と口を塞ぐ行為を何度も繰り返したのだった。 押収されたICレコーダーには、衰弱して絶命するまでの被害者たちの苦悶の様子、そして前上の次のようなつぶやきが録音されていた。 「俺の趣味なんや。こういうことをやって刑務所に入っても、やめられへんねや」 また犯行時の自身の高揚ぶりについても、前上は語っていた。 〈喉はカラカラ。陰茎は張り裂けそうだった。手袋をはめて犯行に移ろうとする、そのこと自体に興奮した〉(前上調書) しかし勃起したとは言いながら、犯行時、前上が性行為に及んだ形跡はなかった。以前、前上と交際していた女性も、調書の中でこう証言している。 「(前上と)一度もセックスしたことはありません。キスをしていると、彼は頬を押しつけてきて、息をできなくしたり、後ろからそっと手を回して私の鼻と口を塞ごうとしたり、だんだん行為はエスカレートしていきました」 前上とて、欲望の処理はしていた。殺人のあと、遺体を山林内に遺棄し、自宅へ戻ってから一連の行為を反芻して自慰行為にふけったのだという。 敗戦後まもなく、東京近郊で7人の女性をレイプし、強盗殺害に及んだ連続殺人鬼、小平義雄も前上と同様、犯行時の心理について赤裸々に語っている。 「私が女を殺したのは、殺してからゆっくりと楽しんでやろうと思うからです。陰部を見ながら、今まさに関係しようという瞬間が何ともいえないのです。殺されてもいいと思います。日本刀で後ろから首を斬られてもかまいません。そんなによいのです」(供述調書) 第8回公判では、裁判官と前上の間でこんなやり取りがあった。 裁判官「あなたは精神鑑定の際に『自分は死刑になると思う。そうでないといけない』と答えているが、今でもそう思っているのですか?」 前上「逮捕された時、『これでやめられる』とホッとした。決してヤケクソになって言ったわけではない」 07年3月28日、大阪地裁は前上に対し、死刑を宣告。同年7月に刑が確定し、その2年後の09年7月、法務省は死刑執行の事実を公表した。 ◆ジャーナリスト 中尾幸司 タグ: あの凶悪&異常犯罪「裁判傍聴ファイル」,大阪,自殺サイト,連続殺人事件,週刊アサヒ芸能 2013年 9/26号 エリア選択 北海道 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島 茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川 新潟 富山 石川 福井 山梨 長野 岐阜 静岡 愛知 三重 滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山 鳥取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄 韓国 [静岡県] [宮城県] [東京都] [東京都] [宮城県] [岡山県] [奈良県] [宮城県] [石川県] [徳島県]
04年暮れ、ネット上のサイトをチェックしていた前上は、自殺願望を持つ者が集まる、とある「自殺サイト」の掲示板で女性の書き込みを発見した。
その女性は同年6月頃から幻聴に悩まされ、〈精神科への入退院を繰り返す一方、自殺サイトに自らの自殺願望を内容とする書き込みをしていた〉(冒頭陳述書より抜粋)
前上は女性および同様の書き込みをする自殺志願者3人の計4人と、頻繁にメッセージ交換をした。程なく、一緒に練炭自殺することを誘う内容のメールを全員に送信。すぐに女性からそれに応じる旨の返事が届いた。
前上は〈レンタカーで人気のないところまで連れて行った後、その手足を縛って逃走・抵抗できないようにしてから、同女の鼻口を塞いで窒息させたり、薬品を嗅がせたりしてもがき苦しませて、これを楽しみ、最後に窒息させ殺害〉(同)する計画を練った。
05年1月7日、前上は女性と待ち合わせ、河内長野市内の山林にある駐車場に到着した。そしてレンタカーの中で女性の手足を緊縛し、白のソックスをはかせたうえ、その鼻と口を塞ぐ行為を何度も繰り返したのだった。
押収されたICレコーダーには、衰弱して絶命するまでの被害者たちの苦悶の様子、そして前上の次のようなつぶやきが録音されていた。
「俺の趣味なんや。こういうことをやって刑務所に入っても、やめられへんねや」
また犯行時の自身の高揚ぶりについても、前上は語っていた。
〈喉はカラカラ。陰茎は張り裂けそうだった。手袋をはめて犯行に移ろうとする、そのこと自体に興奮した〉(前上調書)
しかし勃起したとは言いながら、犯行時、前上が性行為に及んだ形跡はなかった。以前、前上と交際していた女性も、調書の中でこう証言している。
「(前上と)一度もセックスしたことはありません。キスをしていると、彼は頬を押しつけてきて、息をできなくしたり、後ろからそっと手を回して私の鼻と口を塞ごうとしたり、だんだん行為はエスカレートしていきました」
前上とて、欲望の処理はしていた。殺人のあと、遺体を山林内に遺棄し、自宅へ戻ってから一連の行為を反芻して自慰行為にふけったのだという。
敗戦後まもなく、東京近郊で7人の女性をレイプし、強盗殺害に及んだ連続殺人鬼、小平義雄も前上と同様、犯行時の心理について赤裸々に語っている。
「私が女を殺したのは、殺してからゆっくりと楽しんでやろうと思うからです。陰部を見ながら、今まさに関係しようという瞬間が何ともいえないのです。殺されてもいいと思います。日本刀で後ろから首を斬られてもかまいません。そんなによいのです」(供述調書)
第8回公判では、裁判官と前上の間でこんなやり取りがあった。
裁判官「あなたは精神鑑定の際に『自分は死刑になると思う。そうでないといけない』と答えているが、今でもそう思っているのですか?」
前上「逮捕された時、『これでやめられる』とホッとした。決してヤケクソになって言ったわけではない」
07年3月28日、大阪地裁は前上に対し、死刑を宣告。同年7月に刑が確定し、その2年後の09年7月、法務省は死刑執行の事実を公表した。
◆ジャーナリスト 中尾幸司