「女性監禁暴行魔」裁判傍聴ファイル(1)暴行と脅しで女性を完全な支配下に

「女性監禁暴行魔」裁判傍聴ファイル(1)暴行と脅しで女性を完全な支配下に

2013/09/24

「女性監禁暴行魔」裁判傍聴ファイル(1)暴行と脅しで女性を完全な支配下に

「監禁王子」。この奇妙な呼び名で犯罪史にその名を残したのは、05年5月に逮捕された石島泰剛〈やすよし〉受刑者(32)=旧姓・小林=である。03年12月からの1年間に、携帯電話のサイトやコスプレイベントなどで知り合った17歳から23歳の女性4人を、郷里の青森県内や都内のホテル、自宅マンションなどに次々と監禁。監禁は最長116日間に及んだ。

 石島は「SМプレイ」と称する激しい暴行と脅しを用いて女性を完全な支配下に置き、重篤な傷害を負わせた。容疑は監禁致傷、傷害である。05年12月19日の初公判以来、一審の裁判を傍聴して、筆者なりにはっきりつかめたことがあった。それは一連の犯行が、女の心と体を支配せんがための、「動機なき監禁」にすぎないという事実である。

 のちに詳述するが、石島の言動の空虚さ加減は、病んだ者のそれとしか言いようがなかった。単に自己形成に失敗した若者の、自信のなさの裏返しである「自我肥大」などとは、質の点において大いに異なる。

 法廷に臨む石島は、いつも白のスーツの上下を着用した。みずからを「白の王子」と名乗っただけはあって、目鼻だちはそれなりに整っている。

 女性を口説く決めゼリフの一つが、「キミはダイヤの原石。磨けば光るから一緒に住もう」。

 世慣れないうえに自身に夢見がち、おまけに依存心も強いというタイプの女性たちは、おもしろいように「落ちた」らしい。恐らくその種の女性を見分ける独特の嗅覚を、石島が有していたのだ。

 ニュース映像での印象よりも、石島は恐らく二回りは小柄な男である。身長は165センチに満たないかもしれない。痩せこけたその体は、おおよそ筋肉というものをまとわず、白い安物のスーツが、貧弱な背中と肩元のあたりで無残なシワを刻んでいた。

 少女雑誌から抜け出したかのようなこの優男は、ナルシスティックな冷笑を口元に浮かべて、まずは法廷の被告席に腰かけ、目にかかる長髪を大げさに振り払うのだった。そして半身に構えたような姿勢でキザに頬杖をつく。顔を少しうつむかせ、空いた手を額のあたりに持ってゆく。どうやら細い指とナイーブそうなしぐさをアピールしたいようでもある。この全てがルーティンなのだった。周囲の視線が自分に集まってさえいれば、恐らく満足なのだ。

 父親は青森県五所川原市で税理士事務所などを経営する資産家で、一人息子の石島を過保護に育てた。小学校の送り迎えはベンツ。小遣いも、「10万円は下らなかった」ともっぱらの噂である。

 だが、中学進学後に石島は不登校になり、一家の歯車が微妙に狂い始める。石島は精神科へ通院し、高校に進学する頃には幻聴に悩まされた。自殺を図ったこともあったという。

 高校はいったん転校したが、結局はそのまま中退。無為の日々を送る中、99年12月、慕っていた母親が自殺した。

 この事件以降、石島はひきこもり状態となり、「調教もの」などと呼ばれるアダルト向けゲームソフトに没頭した。都内足立区の自宅マンションからは、同種のゲームソフトが約1000点押収されている。

◆ジャーナリスト 中尾幸司