山口健治の“江戸”鷹の目診断「取手記念」

山口健治の“江戸”鷹の目診断「取手記念」

2013/11/07

山口健治の“江戸”鷹の目診断「取手記念」

新田が断然の本命 圧勝まである!

 兄弟選手が同じレースに出走できるのは、一部の例外を除けば決勝戦に限られるだけに容易ではない。

「取手記念」(11月9日【土】~12日【火】)に出走予定のS級S班は、村上義弘、長塚智広、岡田征陽の3人。村上義は3月立川ダービーを勝ち、グランプリ出場権を得ている。長塚と岡田の獲得賞金6286万円と4817万円(10月29日現在)は、ランキング5位と10位。長塚は賞金額でベスト9入りを果たしているが、岡田はここを好走し、競輪祭も上位に食い込まなければSS班のシートを失うだけに、背水の陣で臨むことになる。

 地元で注目するのは芦澤大輔、辰弘の兄弟。6歳離れた2人は師弟関係にあり、器用な自在性は共通する。

 私の現役当時、兄弟そろって出場できたのはGI戦、それも一緒に走れたのは今と変わらず決勝戦だけ。78年平ダービー決勝に兄・国男とともに進出した時は「2人の夢がかなった」と喜んだものだった。

 芦澤兄弟にはこれからもチャンスはあるだろうが、S2とはいえ、伸び盛りの弟の奮起を地元ファンは期待しているはずだ。

 さて、並びと展開。地元勢は牛山貴弘─長塚─芦澤兄も、芦澤弟が勝ち上がれば弟─兄─牛山─長塚になりそうだ。北日本は新田祐大だけが突出していて、その後位には岡田─後閑信一がつけ、南関東は鈴木裕勝瀬卓也。西日本は中部の吉田敏洋坂上樹大、近畿の脇本雄太─村上義─南修二、そして友定祐己柏野智典の岡山両者が圏内だ。

 主導権は脇本が譲らない。地元ラインが好位を取り、友定のまくりに合わせて新田が一気に仕掛けることになる。ただし、芦澤弟が乗ってくれば、残り2周の赤板から発進か。

 新田が断然の本命。マーク巧者でさえ離されるダッシュ力と、400バンクの上がり10秒台のスピードで圧勝まである。対抗は地元記念初V狙う長塚。3番手評価は、村上義と脇本で互角と見た。

 伏兵は先にあげた芦澤辰弘(95期)、96期の竹村勇祐(秋田)と雨谷一樹(栃木)の3選手。竹村は徹底先行、雨谷は海外遠征で力をつけてきた。この2人、1次予選と負け戦で狙いたい。

 初日の最終戦に行われる一発勝負「災害復興支援レース」は細切れ戦濃厚も、深谷知広が抜けた存在。まくる井上昌己と地元の利ある十文字貴信が、どこまで迫るかが焦点になる。

◆プロフィール 山口健治(やまぐち・けんじ) 1957年1月、東京都荒川区生まれ。競輪学校38回生卒業チャンピオンとしてデビュー。主なタイトルは日本選手権、競輪祭(2度)。09年1月引退。現在「スポーツ報知」評論家。