【一杯酒場】　大阪・大正「クラスノ」

くわ焼きを看板メニューに三代続く家族経営の名店

ロシアの都市「クラスノヤルスク」から取った店名は、この店を始めた先代が戦後シベリアに拘留された経験を持ち、その時の苦労を忘れぬようにと付けられたもの。67年前にこの地に店を開いた先代は今年で100歳になり、今はその先代に代わって2代目が厨房を切り盛りしている。

看板メニューは「くわ焼き」。農夫が作業の合間に捕まえた野鳥を鍬の上で焼いて食べたのが由来で、鉄板焼きの古称として使われている。「牛肉たれ焼き」は、柔らかく厚みのある肉をさっぱりしたタレで味付けしてあり、ステーキのような贅沢な味わいだ。

締め加減が絶妙な「きずし」といい、この店の料理はどれも主役級の美味しさで、しかもどれも安い。サービスで出している突き出し2皿（取材時は「えんどう豆煮」と「ごまめ」）も美味。

「出し巻」だけは修行中の若き3代目が作っているのだが、これが絶品だ。ふわっとした食感にしっかりしたダシの風味が輪郭をつける。「少しずつ勉強してもらってます」と2代目は微笑む。これまではビールと酒だけでやってきたが、3代目の意見を取り入れて、チューハイやハイボールもメニューに並ぶようになった。家族経営ならではの温かな雰囲気の中、ゆっくりと世代が移り変わっていく。

クラスノ
住所：大阪府大阪市大正区三軒家東1-3-11
電話：06-6551-2395
営業時間：17:00〜22:00
定休日：土・日・祝日