【一杯酒場】　東京・大森「煮込 蔦八」

文化遺産的老舗名店が奇跡の存続。煮込みの味に涙する。

迫力ある煮込みの大鍋を囲むように、磨き込まれた一枚板のカウンター。どこを見ても味わいのある店内には、酒飲みのツボを突く短冊メニューがずらり。古き良き大衆酒場のお手本のような名店だが、実は昨年、一度閉店の危機を乗り越えている。

創業は昭和45年。もとは夫婦で営む昔ながらの居酒屋だったが、事情により店をたたむことになってしまった。その時立ち上がったのが、現在のオーナーであり、店の常連だった土屋氏。「こんなにも貴重な空間と、長年親しまれてきた煮込みの味を絶やしてはならない！」と、飲食店経営の経験を生かして店を引き継いだのだ。店内の雰囲気や年代物の備品はそのままに、店全体を丁寧にメンテナンス。おかげで昔から通う馴染み客から若い世代まで、誰もが笑顔で杯を傾ける幸せな空間が、今日もこうして存続している。

天下一と謳われる「煮込」は、上質な牛モツの旨味が堪能できる大定番。新鮮そのものの「タコブツ」は、おすすめの塩で食べてみると素材の持つ力強さに圧倒される。

オーナーのお母様が腕をふるう家庭料理にもファンが多く、揚げたての分厚い「鯨竜田揚げ」をほおばりホッピーで流し込めば、東京の居酒屋の真髄を感じられることだろう。

煮込 蔦八
住所：東京都大田区大森北1-35-8
電話：03-3761-4310
営業時間：月〜土17:00〜23:30、日・祝17:00〜22:30
定休日：年末年